日本語自由帳

分かりやすく、伝わりやすく。

演奏会が終わりました

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芸術はそれ自身目的ではない。
人間を表現するための手段である。
― モデスト・ペトローヴィチ・ムソルグスキー

先日,私が所属しているとある交響楽団の定期演奏会が無事に終わりました. スコアの写真を見れば分かるように,私はこの2曲に参加しました.

学生のアマチュアオケに所属しているのですが,彼らにしてはなかなか難しい2曲だったように思われます. いや,3年前の「魔法使いの弟子」と「シェラザード」に比べてば,今回の2曲はまだマシだったのかなとも感じてしまいますが.

演奏会本番では,素敵な演奏を聴きに来られたみなさんにお届けできたのではないでしょうか. 私自身,本番の舞台に立って思いましたが「普段の練習でこんな演奏してたっけな」と思うぐらい,演奏者らの集中力と決断力がどこかから聴こえてきたような,そんな気がしました. 私の演奏に関しては練習不足で進捗ダメです状態だったので,ここでは触れないことにします.

私のことは置いておいて,今回の定期演奏会の全体を通して思ったことを今から2つ紹介します.

練習は本番のように

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【本番の舞台でいつも練習したいよね】

本番前,合奏も残り数回となった時に,学生指揮者の方から合奏の予定と共にこんなメッセージが添えられたメールが送られてきました.

残りの合奏は,練習ではなく本番で演奏しているつもりで真剣に望んでください.

と.これは裏を返せば「今まではずっと練習のつもりでやってきました」と言っているようなものです. 練習を「これは練習だ」と何も考えることなく練習すると,本番では失敗してしまいます. なぜなら本番では何が起こるかわからないから.

「練習するときは、本番だと思って本気で真剣にやる。本番は練習通りにやる。」 「練習は本気、本番は遊び(リラックスしてやるくらいがちょうどいい)」

これはオーケストラの練習にとどまらず,本番のあるものならどの練習も同じことがいえます. 練習のときでもいつも「これは本番だ」という意識を持って,程よい緊張感の中で練習することがすごく大事になってきます. そして本番も練習していた時と同じように演奏すればよいのです. そうすると本番でいつもと違うことが起こったとしても,その緊張感に慣れているので,それにうまく対応することができます. 「練習を本番のように思って」って思うことは難しいです.いくらイメージしたって本番に限りなく近い緊張感はなかなか生まれてこないと思います. こう横に常に自分の苦手な人とか怒られたら怖い人とかいれば,程よい緊張感が生まれるんですけどね. 「これは練習だから大丈夫」じゃなくて「本番だから失敗してもいいと思うなよ」という雰囲気. そういう雰囲気をオーケストラ全体で作っていくことが大事なのかもしれません. ヘラヘラしながらやる練習はやるだけ無駄.

意識の差異

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【意識がバラバラだと前に進まない】

これって学生のアマチュアオケだからどうしようもない問題だと思います. オーケストラにいる人の多くがきっと「素晴らしい演奏会にしたい」と考えているでしょう. でもオケの中には「曲が通ればそれで上出来」とか「自分さえパッセージが回ればそれでいい」とか, 若干違ったことを考えている人がいると思います. そういう意識の差異というのはオケ全体で響いてくると思います. リーダーがみんなの着地点を同じように設定しあげないと,みんながバラバラに進んでしまう. その結果,“オーケストラ全体”ではなく“オーケストラ個々”の演奏になってしまう. みんな同じ場所にいるけど,それぞれ個人で演奏している感じになってしまうのです. それって面白くないじゃないか.(いや俺はそうしたいんじゃ!と叫ぶ奴や,「コミュ障だから…」と細々と言う奴はオケをやめればいい)

バンドだってボーカル・ギター・ベース・ドラムの息が合ってないとひとつの音楽になりません. オーケストラなんてもっと典型的で,50人とか100人とかの大所帯がみんなでひとつにならない限り音楽はひとつになりません. 「指揮者の棒を見ているから大丈夫!」というのも間違い.それは「指揮者 VS みんな」になってるだけであって,みんながひとつにまとまっているわけではありません. だから個々の練習も大事だけど,隣に座っている人とか,違うパートの人とかと一緒に練習することが大事です.

今の現役生たちはそういうことにいつ教えてもらい,いつ気づくのでしょうかね.

結局みんなの意識がひとつの方向に向いてないと,音楽として完成しないし,それ以上のものは生まれないと思います. 1本の矢が弱くても,それが100本ちゃんと同じ方向に集まっていたら折れることはないんですよ.

まとめ

もう大学生なんだし,がむしゃらに練習するよりも,もっと効率的に練習できる方法ってあるはずです. オケのみなさんは高いお金払って合宿に行って,朝から晩まで練習しているんだし,そのお金を無駄にしないためにも,もっと頭を使うべきですよ,きっと. そして私はもっとがむしゃらに練習すべきなんですよ,きっと. そうすると本番一ヶ月ぐらい前に完成して,更にこの作品をどうしていくかということを考えられる余裕が生まれるんでしょう.

譜面上に書かれていることを演奏することは,たいていできる. でも,それ以上の表現を目指そうとすることは難しい. 自分がいるオーケストラはそれが実現できるオーケストラだと思っているので,今後に期待したいところですね. そして私はあと何回,この定期演奏会の舞台に乗れるんでしょうかね.